安心院という町が大分にある。あじむ、と読むこの人口 九千人の町はアフリカンサファリがあることで九州では 古くから有名であるが、九州以外での知名度は低い。 湯布院という、これはもう全国的に知られた温泉場で 高速を降りた。安心院は湯布院の北にある。
「富貴野滝」に行く。「うらみの滝」ともいう。 以下、余談であるが「うらみ」の最も有名なものは一八二五年に鶴屋南北が 書いた「東海道四谷怪談」であろう。長期に渡って演じられ、日本では知らぬ 者のないこの作品に、筆者は一つの疑問を持っている。 言うまでもないことだが、四谷という宿場は東海道には、ない。日本橋から 5kmほど西のこの町は、現在は国道20号線と呼ばれる甲州街道沿いに あるのである。どういうことであろうか。 それは、よい。 案内の標識から入った狭い道の行き止まった処に駐車場と休息所があり、 そこからは歩く。休息所にはノートが一冊置いてある。訪問者が感想などを 書くアレである。最後の書きこみは、数日前、神戸の人であった。
この滝が「うらみの滝」とも言われることは先にふれた。滝の下部で侵食が 著しく、内側が抉られ、回廊のような空間が向こう岸まで続くのである。 全国にいくつの裏見滝があるか知らぬが、中九州では「大分の慈恩滝」 「長崎の裏見滝」「熊本の鍋ヶ滝」(後述)が知られている。
安心院におけるもう一つの有名な滝は「東椎屋滝」であろう。 富貴野滝から6kmほどだが、相当大回りせねばならない。国道500号線の ひときわ大きな看板を曲がると「熊野神社」がある。イチイガシ、という樹齢 4〜500年の古木が2本、境内に聳えている。その少し先が「東椎屋滝」の 駐車場だが、かなり広い。多客時は有料らしく料金所も、ある。 雨降りの平日の午前中にもかかわらず、遊歩道の入口では土産物屋が営業 しておりお茶をご馳走になった。